黒沢院長のまとめ
- 初めてのヘルペス感染で起こります: 大人の「口唇ヘルペス」の原因となるウイルスに初めて感染した際に、重い症状として現れます。
- 「歯ぐきの腫れと出血」が特徴です: 高熱とともに、口の中全体に痛い口内炎ができ、特に歯ぐきが真っ赤に腫れて少し触れただけで出血しやすくなります。強い口臭も伴います。
- 特効薬(抗ウイルス薬)があります: 早期(発症から数日以内)に抗ウイルス薬を飲み始めることで、症状を軽くし、回復を早めることができます。
- 最大の課題は「痛み」と「脱水」: 手足口病などと同様、口の痛みが強烈です。痛み止め(アセトアミノフェン)を活用し、こまめに水分を補給することが最も重要です。
1. ヘルペス性歯肉口内炎ってどんな病気?
単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)というウイルスに初めて感染したときに起こる病気です。生後半年から5歳くらいの乳幼児に多く見られます。 すでにウイルスを持っている大人(保護者など)の唾液を介して感染することが多く、潜伏期間は2〜7日程度です。一度感染するとウイルスは体内の神経節に一生住み着き、大きくなってから疲れや免疫力が落ちた時に、唇の端に水ぶくれができる「口唇ヘルペス」として再発することがあります。
2. 手足口病やヘルパンギーナとの違い
口内に水疱ができる病気としては夏風邪(手足口病、ヘルパンギーナ)が有名ですが、ヘルペス性歯肉口内炎には以下の明確な特徴があり、これらを見分けることが適切な治療につながります。
- 歯ぐきの症状が強い: 歯ぐきがパンパンに真っ赤に腫れ、歯磨きや食事が少し触れただけでも出血します。
- 口臭が強くなる: 口の中の強い炎症と出血により、特有の強い口臭がします。
- 高熱が長引きやすい: 39度以上の高熱が数日から1週間近く続くことがあります。
- 発疹の場所: 手足口病のように手足には発疹が出ませんが、唇の周りや口の周囲の皮膚にも水疱ができることがあります。
3. 治療とお薬について
ウイルスに対する「特効薬」が存在する点が、他の口内炎を起こすウイルス感染症との大きな違いです。
- 抗ウイルス薬(アシクロビルなど): ウイルスの増殖を直接抑えるお薬です。発症からできるだけ早期(目安として72時間以内)に飲み始めることで、発熱の期間や口の痛みを劇的に短縮する効果が期待できます。
- 解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン): お熱を下げるだけでなく、激しい口の痛みを和らげる目的で積極的に使用します。痛くて水分が取れない時は、無理に飲ませる前に痛み止めを使用し、少し痛みが引いたタイミングで水分補給をするのが効果的です。
4. 食事と水分の工夫
口の中がひどく荒れているため、酸味のあるもの、塩辛いもの、熱いもの、硬いものは激痛を伴います。
- おすすめの食事: 冷ましたおじや、冷やしうどん、豆腐、冷たいゼリーやプリンなど、噛まずに飲み込めてのど越しの良いもの。
- 水分の取り方: オレンジジュースなどは避け、麦茶や経口補水液(OS-1など)を、スプーンやストローを使って「一口ずつ、こまめに」与えてください。
5. 登園・登校の目安
学校保健安全法に基づく一律の出席停止期間はありません。 周囲への感染力はありますが、基本的にはお熱が下がり、口の痛みが落ち着いて普段通りの水分と食事が取れるようになれば登園可能です。ただし、よだれや水ぶくれの中にウイルスが含まれているため、お家でもタオルの共有は避け、手洗いを徹底してください。
6. すぐに受診してほしい「危険なサイン」
激しい痛みによって水分が全く取れなくなり、脱水症を起こすことがこの病気で最も注意すべき点です。以下のサインが見られたら、早めに受診、または夜間救急を受診してください。
- 半日以上おしっこが出ていない、または色が非常に濃い。
- 水分を全く受け付けない状態が続いている。
- 目がくぼんでいる、泣いても涙が出ない。
- ぐったりしていて、視線が合わない。




