黒沢院長のまとめ
- 原因は「細菌(バイ菌)」です: かぜのウイルスとは違い、溶血性連鎖球菌という細菌がのどに感染して起こります。
- 咳や鼻水が「出ない」のが特徴: 発熱やのどの痛みが出ますが、必ずしも高熱や激痛になるとは限りません。
- 抗生剤がしっかり効きます: ウイルスには無効な抗菌薬(抗生物質)が劇的に効きます。
- 絶対に「最後まで飲み切る」こと: 症状が消えても、合併症(心臓の病気など)を防ぐために、決められた日数(通常10日間)お薬を飲み続けることが最大のルールです。
- 治癒後の尿検査は原則不要です: 以前は必須とされていましたが、現在は明らかな症状がない限り推奨されていません。
1. 溶連菌感染症ってどんな病気?
A群溶血性連鎖球菌(ようけつせいれんさきゅうきん)という細菌が、のどに感染して炎症を起こす病気です。冬から春、あるいは初夏にかけて流行しやすく、飛沫感染(咳やくしゃみ)や接触感染でうつります。 幼稚園や保育園などの集団生活で感染することが多く、ごきょうだいや保護者の方にうつることも珍しくありません。
2. 気づいてあげるサイン(かぜとの違い)
ただのかぜと違い、溶連菌にはいくつかのはっきりとした特徴があります。最も重要なポイントは、「咳や鼻水といった普通のかぜ症状があまり見られない」ということです。
- 発熱:突然の高熱が出るイメージが強いですが、実際には微熱程度で済むこともよくあります。
- のどの痛み:のどの奥が赤く腫れますが、つばを飲み込めないほどの激痛ではなく、少し痛がる程度で普通に食事ができることも多いです。
- イチゴ舌:舌の表面に、イチゴのような赤いツブツブができます。
- 皮膚の症状:体に細かく赤い発疹が出たり、治りかけの時期に手足の指先から皮がむけたりすることがあります。
「咳も鼻水も出ていないけれど、お熱があってのどを気にかけている」という場合は、溶連菌の可能性を疑います。
3. 検査について
のどの奥を細い綿棒でこすって、原因が溶連菌かどうかを調べる迅速検査を行います。5〜10分程度でその場で結果が分かります。 ※ただし、咳や鼻水などの症状が強い場合は、医学的に溶連菌の可能性が低いため、不必要な検査や痛い思いを避ける目的で検査を見送ることがあります。
【3歳未満のお子様には、原則として検査を行いません】 「上の子が溶連菌になったから、熱が出た下の子も検査してほしい」といったご希望をよくいただきます。しかし、3歳未満の小さなお子様の場合、溶連菌がのどにいるだけの「保菌(ほきん)」状態であることが多く、本格的な溶連菌感染症を起こすことはまれです。 また、この年齢では予防すべき最大の合併症(リウマチ熱)が起こることも極めてまれなため、医学的なガイドラインでも3歳未満への検査は推奨されていません。症状からして溶連菌感染症が極めて疑わしいなどの事情がない限り、痛い検査は控え、通常のかぜとして対応します。
4. 治療について
ウイルスによるかぜとは異なり、細菌である溶連菌にはアモキシシリンなどの抗菌薬(抗生物質)が非常に効果的です。お薬を飲み始めると、1〜2日で熱が下がり、のどの痛みも楽になります。
お薬を数日飲んで「すっかり元気になったから」と自己判断でお薬をやめてしまうのはやめましょう。 のどの症状が消えても、溶連菌はまだ体内に隠れ潜んでいます。これを完全に退治しきれないと、数週間後に「リウマチ熱(心臓の弁に障害が残る重い病気)」などの合併症を引き起こす恐れがあります。
これらを完全に防ぐため、「症状が消えても、処方されたお薬(通常10日間)を最後の一滴まで必ず飲み切ること」が、溶連菌治療の最大のゴールです。
※抗生剤が出る場合、1日3回のタイプが出ることがほとんどです。登園などで昼の薬が飲めない場合、夕方家に帰ってきてから昼の分を飲んで構いません。夜の薬との間隔は、3-4時間ほど空けていただければ十分です。
5. 治ったあとの「尿検査」は必要?
かつては、溶連菌のもう一つの合併症である「急性糸球体腎炎(腎臓の炎症)」を早期発見するため、治癒から2〜3週間後に全員に尿検査を行うのが一般的でした。保護者の方の中にも、ご自身が子どもの頃に尿検査をした記憶がある方がいらっしゃるかもしれません。
しかし現在の医学では、「顔や足のむくみ」「コーラ色の尿(血尿)」「尿が出ない」といった明らかな症状がない限り、ルーチンでの尿検査は推奨されていません。無症状のまま尿検査を行っても治療のメリットがないことが分かっているため、当院でも原則として治癒後の尿検査は行っておりません。
6. 登園・登校のルールとホームケア
溶連菌は、適切な抗菌薬を飲み始めると、24時間後には周りへの感染力がほとんどなくなります。そのため、法律などで定められた長いお休み期間はありません。 「抗生剤を飲み始めてから24時間以上が経過し、かつお熱が下がって元気であれば」、すぐに登園・登校が可能です。
のどが痛い間は、オレンジジュースなどの酸っぱいものや熱いものを避け、ゼリーや冷めたうどん、お豆腐など、のど越しの良いものを与えてあげてください。




