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子どもの「おたふく風邪(流行性耳下腺炎)」について

黒沢院長のまとめ

  • 耳の下やあごが腫れる病気です: ムンプスウイルスが唾液腺に感染し、痛みと腫れを引き起こします。熱が出ないこともあります。
  • 最大の合併症は「治らない難聴」です: 片耳の聴力が完全に失われる「ムンプス難聴」を引き起こすリスクがあり、これに対する有効な治療法はありません。
  • 特効薬はありません: ウイルスを退治する薬はなく、痛み止めの使用など症状を和らげる治療(対症療法)のみとなります。
  • 酸っぱい食べ物は避けてください: 唾液がたくさん出ると腫れた部分が強く痛むため、食事には工夫が必要です。
  • 腫れが出てから「5日」はお休みです: 感染力が強いため、学校保健安全法で厳密な出席停止期間が定められています。

1. おたふく風邪ってどんな病気?

正式名称を「流行性耳下腺炎(りゅうこうせいじかせんえん)」といい、ムンプスウイルスの飛沫感染(咳やくしゃみ)や接触感染によって起こります。 感染力は非常に強く、2〜3週間の長い潜伏期間を経て発症します。年齢としては3〜6歳の幼児期にかかることが多い病気です。

2. 症状の特徴

ウイルスが耳の下(耳下腺)やあごの下(顎下腺)の唾液腺に入り込み、炎症を起こします。

  • 腫れと痛み: 耳の下からあごにかけて、ぽっこりと腫れ上がります。最初は片方だけ腫れ、数日後にもう片方が腫れてくることが多いですが、片方だけで終わることもあります。ものを噛んだり飲み込んだりするときに痛みます。
  • 熱: 腫れと同時、あるいは少し前から熱が出ることがありますが、全く熱が出ないケースも珍しくありません。熱は通常3〜5日程度で下がります。

3. 合併症の恐ろしさ

おたふく風邪は単に「顔が腫れるだけの病気」ではありません。以下の重大な合併症を引き起こすリスクがあるため、決して軽視してはいけない疾患です。

  • ムンプス難聴: ウイルスが内耳に感染することで起こります。約1000人に1人の割合で発生するとされ、「片耳の聴力が完全に、かつ永久に失われる」という非常に重い後遺症を残します。
  • 無菌性髄膜炎: ウイルスが脳を覆う膜(髄膜)に炎症を起こします。激しい頭痛や何度も繰り返す嘔吐が見られ、入院治療が必要になることがあります。

4. 治療とホームケアの工夫

ムンプスウイルスに対する特効薬(抗ウイルス薬)はありません。

  • 痛み止め(アセトアミノフェンなど): 腫れによる痛みや頭痛、熱で辛い時に使用します。
  • 食事の工夫: 酸っぱいもの(柑橘類、梅干しなど)やよく噛む必要があるものは、唾液の分泌を促して強い痛みを引き起こすため避けてください。プリン、ゼリー、冷めたおじや、豆腐など、噛まずに飲み込める刺激の少ないものを与えましょう。

5. 登園・登校のルール

学校保健安全法により、以下の基準を満たすまで登園・登校はできません。

「耳下腺、顎下腺又は舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ、全身状態が良好になるまで」

熱が下がっても、腫れが出た日を「0日目」として最低5日間(6日目の朝まで)はお休みする必要があります。腫れが長引いている場合は、完全に引くまで登園できません。医師による登園・登校許可証が必要となります。

6. 予防は「ワクチン」しかありません

おたふく風邪の重篤な合併症(特に難聴)を防ぐ唯一の方法は、おたふく風邪ワクチン(任意接種)の接種です。 日本では現在も公費負担のない任意接種(自己負担)となっていますが、日本小児科学会は、1歳と就学前(年長児)の計2回の接種を強く推奨しています。お子様の将来の聴力を守るためにも、確実な接種をお願いいたします。

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