黒沢院長のまとめ
- 卵や牛乳とは違い、「治りにくい」のが特徴です: 成長に伴って自然に治る(耐性を獲得する)割合は2割程度と低く、大人になっても持ち越すことが多いアレルギーです。
- ごく微量でも強い症状(アナフィラキシー)が出やすいです: ほんの少し食べただけでも、呼吸が苦しくなったり血圧が下がったりする重篤な症状を引き起こしやすい点に注意が必要です。
- 「木の実(ナッツ)」ではなく「豆」の仲間です: クルミやアーモンドとは植物としての分類が異なります。ピーナッツがダメだからといって、他のナッツや大豆も全て除去する必要はありません。
- 検査の「Ara h 2(アラーエイチツー)」は重症度の目安になります: 血液検査でこの数値が高いと、強いアレルギー症状が出る危険性が非常に高くなります。
- 予防の鍵は「肌を綺麗にして、早くから少しずつ」です: 食べるのを遅らせるのではなく、乳児期からピーナッツバターなどで少しずつ摂取することが、最大のアレルギー予防になると世界的に証明されています。
1. ピーナッツアレルギーってどんな特徴があるの?
これまでご紹介してきた卵、牛乳、小麦、大豆のアレルギーは、成長とともに自然に治っていく(耐性を獲得する)お子様が多いというお話をしました。
しかし、ピーナッツアレルギーはそれらとは少し性質が異なります。 一度発症すると成長しても治りにくく(自然に治るのは全体の20%程度)、生涯にわたって付き合っていくケースが多いのが特徴です。また、ごく微量(ほんの数ミリグラム)でも、アナフィラキシーなどの重篤な症状を引き起こしやすい、という非常に厄介な側面を持っています。
2. ナッツではなく「豆」の仲間です
ピーナッツ(落花生)は「ナッツ」という名前がついていますが、実はクルミやアーモンドのような木の実ではなく、大豆などと同じ「マメ科」の植物です。
診察室で「ピーナッツアレルギーなので、くるみもアーモンドも全部避けています」という親御さんがいらっしゃいますが、基本的にその必要はありません。ピーナッツにアレルギーがあっても、木の実類(クルミ、アーモンド、カシューナッツなど)は問題なく食べられるお子様はたくさんいます。不必要な食事制限を避けるためにも、それぞれ「食べられるかどうか」を個別に正しく見極めることが大切です。
3. 血液検査のコンポーネント:「Ara h 2」
ピーナッツアレルギーが疑われる場合、血液検査では「ピーナッツ」全体のほかに、「Ara h 2(アラーエイチツー)」という成分(コンポーネント)を調べます。
- Ara h 2が高い場合: ピーナッツを食べた際に、全身のじんましんやアナフィラキシーなどの重篤な症状を引き起こす危険性が非常に高いことを示しています。かなり慎重な管理が必要になります。
- Ara h 2が陰性(ピーナッツ全体は陽性)の場合: シラカンバなどの花粉症を持っているお子様が、花粉と構造が似ている成分に反応しているだけ(交差反応)の可能性があります。この場合、重篤なアナフィラキシーは起こりにくく、食べると口の中がイガイガする「口腔アレルギー症候群」に留まることが多いと判断する目安になります。
4. 世界の常識を変えた「早期摂取による予防」
一昔前は「ピーナッツはアレルギーになりやすいから、3歳を過ぎるまで食べさせないように」と指導されていました。 しかし近年、海外の大規模な研究(LEAP試験)によって、「食べるのを遅らせる方が、かえってピーナッツアレルギーになる確率が跳ね上がる」ということが明確に証明されました。
現在のアレルギー予防の常識は以下の通りです。 「赤ちゃんの肌をツルツルに保った(スキンケアを徹底した)上で、生後半年頃からピーナッツ成分を少しずつ口から食べさせていく」
これにより、ピーナッツアレルギーの発症を劇的に予防できることが分かっています。
【注意】絶対に「丸ごとのピーナッツ」は与えないでください!
アレルギー予防のためにピーナッツを食べさせようとして、「丸ごとのピーナッツ」や「砕いたピーナッツ」を5歳以下のお子様に与えるのは絶対にやめてください。 噛み砕く力が弱いため、気管に詰まって窒息する死亡事故が毎年のように発生しています。 離乳食で与える際は、必ず「無糖のピーナッツバター」や「ピーナッツペースト」をごく少量、パン粥などに溶かして与えるようにしてください。
5. 診断と治療、誤食を防ぐために
血液検査の結果や問診から、正確な診断のためにクリニックで「食物経口負荷試験」を行うのは他の食材と同じです。ただし、ピーナッツは重症化しやすいため、より慎重に、ごく微量からスタートします。
ピーナッツは、日本の法律でアレルギー表示が義務付けられている「特定原材料8品目」の一つです。 市販のお菓子(チョコレートやクッキーなど)はもちろん、カレールーの隠し味や、ドレッシング、エスニック料理など、思いがけないところに潜んでいることがあります。
微量でも症状が出やすいため、食品を買う時や外食の際には、必ず「アレルギー表示(落花生・ピーナッツ)」を確認する習慣を徹底してください。万が一の誤食に備え、エピペン(自己注射薬)を処方されている場合は、常に携帯しておくことが命を守るために最も重要です。




