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「ただの汗っかき」じゃないかも?原発性多汗症のお話

みなさんこんにちは、院長です!

今日は、「多汗症」に関するお話です。

「汗っかきなのは体質だから、仕方ない」

そう思って、誰にも相談せずにいませんか?

実は、汗が多すぎて生活に困っている状態は「多汗症」という立派な病気で、保険で使える治療薬もちゃんとあります!今回は、子どもから若い世代に多い「原発性局所多汗症」についてお話ししたいと思います。

多汗症ってどんな病気?

多汗症には、甲状腺の病気などほかの病気や薬が原因で汗が増える「続発性」と、はっきりした原因がないのに手のひら・足の裏・ワキ・頭や顔などに汗が多く出る「原発性」があります[1]。今回お話しするのは後者の「原発性局所多汗症」です。

暑いときや緊張したときだけでなく、そうでないときにも汗が出て、日常生活に支障が出てしまうのが特徴です[1]。

実は珍しくない病気です

日本で行われた大規模なアンケート調査では、原発性局所多汗症の人は約10%と報告されています。部位別ではワキが5.9%、頭・顔が3.6%、手のひらが2.9%、足の裏が2.3%でした[1]。10人に1人と考えると、クラスに数人はいてもおかしくない計算ですね。

また、手のひらの多汗症は小学校に入るころから気づかれることが多く、ワキは思春期ごろから、という傾向があります[1]。まさに小児科の年代で始まることの多い病気です。

こんな症状があったら多汗症かも

診療ガイドラインでは、はっきりした原因のない局所的な汗が6か月以上続いていて、次の6つのうち2つ以上に当てはまる場合に原発性局所多汗症と診断します[1]。

  • 25歳以下で始まった
  • 左右対称に汗が出る
  • 寝ているあいだは汗が止まる
  • 週1回以上、汗が多くて困るときがある
  • 家族にも同じような人がいる
  • 日常生活に支障がある

「プリントが濡れて破れる」「スマホやゲーム機がうまく操作できない」「友達と手をつなぐのが嫌」「ワキの汗じみが気になって服を選んでしまう」…こういったお悩みも、立派な「日常生活の支障」です。

逆に、寝ているときにも汗をかく、片側だけ汗が出る、体重が減ってきた、動悸がする、といった場合は別の病気が隠れていることもあるので、早めにご相談くださいね[1]。

どんな治療があるの?

これまで日本では、多汗症に保険で使える塗り薬がほとんどなく、薬局で買える制汗剤や、保険のきかない塩化アルミニウムの外用が中心でした。それがここ数年で、保険で使える塗り薬が次々に登場しています!

ガイドラインでは、ワキの多汗症にも手のひらの多汗症にも、抗コリン薬の塗り薬が推奨度B(行うよう勧められる)とされています[1]。抗コリン薬は、汗を出しなさいという神経の信号を汗腺のところでブロックすることで、汗を減らすお薬です。

当院では、このうち次の2つのお薬を処方しています。

ラピフォートワイプ(ワキの多汗症)

薬液がしみこんだ不織布のシートで、1日1回、両ワキを拭くように塗るお薬です[2]。

国内の臨床試験(9歳以上の方が対象)では、4週間使ったあとに「汗の悩みの程度が2段階以上よくなり、かつ汗の量が半分以下になった」人が、ラピフォートで41.1%、有効成分の入っていない薬(プラセボ)で16.4%と、はっきりとした差がみられました[2]。

アポハイドローション(手のひらの多汗症)

1日1回、寝る前に両手のひら全体に塗るローションです。手のひらの多汗症に対する治療薬としては、世界で初めて承認されたお薬です[1][3]。

国内の臨床試験(12歳以上の方が対象)では、4週間使ったあとに汗の量が半分以下になった人が、アポハイドで52.8%、プラセボで24.3%でした[3]。

使うときの注意点

どちらも抗コリン薬なので、共通して気をつけていただきたいことがあります[2][3]。

  • 目に入らないように: 薬がついた手で目をこすると、瞳が開いてまぶしく感じたり、かすんで見えたりすることがあります。ラピフォートは使ったあとすぐに手を洗い、アポハイドは朝起きて手を洗うまで目などに触らないようにしてください。目に入ったら、すぐに水で洗い流してくださいね。
  • 口の渇き、おしっこの出にくさ: 抗コリン作用による副作用として出ることがあります。
  • 塗ったところのかぶれ: 赤みやかゆみが出たら教えてください。
  • 暑い日の体温上昇: 汗が減るぶん体に熱がこもりやすくなることがあるので、暑い時期や運動のときは熱中症に注意しましょう(ラピフォートの添付文書にも注意書きがあります[2])。

また、緑内障(閉塞隅角緑内障)など、一部の病気がある方は使えません[2][3]。気になることがあれば、診察のときに遠慮なく聞いてくださいね。

なお、臨床試験はラピフォートが9歳以上、アポハイドが12歳以上の方を対象に行われていて、それより小さいお子さんでの安全性はまだ確かめられていません[2][3]。年齢や症状に合わせて、ほかの治療法も含めて一緒に考えていきましょう。

おわりに

汗の悩みは、見た目にはわかりにくいぶん、本人がひとりで抱え込んでしまいがちです。とくに思春期のお子さんは、「恥ずかしい」と思ってなかなか親御さんにも言い出せないこともあるかもしれません。

「汗っかきなだけだから」とあきらめずに、気になったら一度ご相談ください!「そんなことで受診していいの?」なんて思わなくて大丈夫ですからね。


出典

[1] 藤本智子, 横関博雄, ほか. 原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版(2023年12月一部改訂). 日本皮膚科学会雑誌. https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/takansho2023_231220.pdf

[2] ラピフォートワイプ2.5% 添付文書(KEGG MEDICUS 医療用医薬品情報)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00070179

[3] アポハイドローション20% 添付文書(KEGG MEDICUS 医療用医薬品情報)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00070806

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