みなさんこんにちは、院長です!
10月に入ると、いよいよインフルエンザワクチンのシーズンですね。今年、当院では注射のワクチンに加えて、鼻にシュッとスプレーするタイプのワクチン(経鼻生ワクチン「フルミスト」)もご用意しています!
そうなると、きっと多くの方が迷われるのが「結局、注射と鼻、どっちがいいの?」というところだと思います。診察室でも本当によく聞かれるので、今回は論文やガイドラインをもとに、できるだけ正確にお伝えしてみたいと思います。
そもそも何が違うの?
注射のワクチン(不活化ワクチン)は、感染力をなくしたウイルスの成分を注射して、血液の中に抗体を作るワクチンです。
一方、フルミストは「弱毒化した生きたウイルス」を鼻の粘膜にスプレーするワクチンです。血液中の抗体に加えて、ウイルスの入り口である鼻やのどの粘膜での免疫も誘導できるのが特徴です[1]。
「生きたウイルスって大丈夫なの?」と心配になるかもしれませんが、病気を起こす力を弱めたウイルスなので、健康なお子さんであれば安心して使っていただけるワクチンです。
ただし、接種したお子さんからワクチンのウイルスが周りにうつる可能性があるとされています。ご家族や身近な方に重い免疫不全の方がいる場合は、接種後1〜2週間はなるべく密接な接触を避けていただく必要があるので、事前に教えてくださいね[1]。
効果はどっちが高いの?
ここが一番気になるところですよね。
まず、「どちらもちゃんと効く」ということは、しっかりとしたエビデンスで確かめられています。ランダム化比較試験を中心に解析したコクランレビュー(2018年)では、プラセボ(偽薬)と比べて、生ワクチンではインフルエンザにかかる子が18%→4%、注射の不活化ワクチンでは30%→11%に減ったと報告されています[2]。ただしこれは別々の研究をまとめたもので、同じ条件で直接比べたものではないので、「どちらが上」という比較には使えません。
実は、生ワクチンには効果が不安定だった時期があります。2013〜2016年ごろ、アメリカを中心とした実地データでは、A型(H1N1)に対する生ワクチンの効果がほとんど見られないシーズンがありました(B型やA型H3N2に対しては効果が保たれていました)[3]。これを受けて、アメリカの予防接種諮問委員会(ACIP)は2016-17、2017-18シーズンの2年間、生ワクチンを「推奨しない」としていました。その後、ワクチンに使うH1N1のウイルス株が変更され、2018-19シーズンから再び推奨されるようになっています[4]。
推奨を再開したとき、ACIPは「注射も鼻もどちらも選択肢で、どちらかを優先する推奨はしない」としています[4]。つまり、今のところ「鼻の方が効く」「注射の方が効く」とはっきり言える状況ではない、というのが正直なところかなと思います。
副反応は?
フルミストで一番多い副反応は鼻水・鼻づまりで、国内の試験では半分以上のお子さんにみられました(59.2%)。そのほか、咳(27.8%)やのどの痛み(17.9%)など、かぜのような症状が中心です[1]。
注射の方は、打ったところが赤く腫れたり痛んだりするのがよくある副反応です。
鼻のワクチンが使えないお子さんもいます
フルミストは、以下のお子さんには使えません[1]。
- 2歳未満、または19歳以上の方
- 免疫の病気がある方
- ステロイドの飲み薬・注射を長期間または大量に使っている方(やめてから6か月以内の方も含みます)、免疫抑制剤を使っている方
※ここでいうステロイドは飲み薬と注射のことで、塗り薬や吸入薬は含まれていません。
また、以下のお子さんは接種してよいか慎重に判断が必要なので、診察でご相談させてください[1]。
- 重い喘息がある方、ゼーゼー(喘鳴)が出やすい方
- アスピリンなどのサリチル酸系のお薬を飲んでいる方
とくに1歳台までのお子さんは、年齢的に注射しか選べないので注意してくださいね(注射のワクチンは生後6か月から接種できます[6])。
回数の違いは意外と大きいかも
注射のワクチンは、13歳未満だと2〜4週間(できれば4週間)あけて2回打つ必要があります[5][6]。一方、フルミストは1回で終わりです[1]。
「2回連れてくるのが大変…」「注射で毎年大泣きしてしまって…」というご家庭にとっては、ここが一番のメリットかもしれませんね。
結局どっちがいいの?
まとめると、
- 効果については、今のところ「どちらもしっかり効く」で、はっきりとした優劣はない
- 2歳未満のお子さんや、免疫の病気などでフルミストが使えないお子さんは注射
- 2歳以上でフルミストが使えるお子さんなら、「針を使わない」「1回で終わる」フルミストはかなり魅力的な選択肢
というのが、院長としての考えです。
診察の中でも、「お子さんの年齢と体質的にどちらも選べますよ。痛いのが苦手なら鼻、費用を抑えたいなら注射、といった感じで選んでもらって大丈夫です」とお伝えすることが多いと思います。迷ったら、遠慮なくご相談ください!
クロコキッズクリニックでは土日祝日や平日の夕方にもワクチン接種の枠を設けていますので、ご家族の予定に合わせて予約してみてくださいね。それでは皆様、今年のインフルエンザシーズンもしっかり備えて乗り切りましょう!
出典
[1] フルミスト点鼻液 添付文書(KEGG MEDICUS 医療用医薬品情報)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00071428
[2] Jefferson T, Rivetti A, Di Pietrantonj C, Demicheli V. Vaccines for preventing influenza in healthy children. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2018;CD004879. https://www.cochrane.org/evidence/CD004879_vaccines-preventing-influenza-healthy-children
[3] Caspard H, Mallory RM, Yu J, Ambrose CS. Live-Attenuated Influenza Vaccine Effectiveness in Children From 2009 to 2015–2016: A Systematic Review and Meta-Analysis. Open Forum Infectious Diseases. 2017;4(3):ofx111.(著者はフルミスト製造元MedImmune社の社員)https://academic.oup.com/ofid/article/4/3/ofx111/4004900
[4] Grohskopf LA, et al. Update: ACIP Recommendations for the Use of Quadrivalent Live Attenuated Influenza Vaccine (LAIV4) — United States, 2018–19 Influenza Season. MMWR. 2018;67(22):643–645. https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/67/wr/mm6722a5.htm
[5] 厚生労働省「令和6年度インフルエンザQ&A」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2024.html
[6] インフルエンザHAワクチン「生研」添付文書(KEGG MEDICUS 医療用医薬品情報)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00051008




