黒沢院長のまとめ
- 毎月、カレンダーで計ったかのように規則正しく高熱を繰り返す病気です: 3〜8週間の一定のサイクルで39度以上の高熱が出ます。熱と熱の間は全く症状がなく、元気に過ごせます。
- 「発熱・口内炎・のどの腫れ・首のリンパ節の腫れ」が4大症状です: ウイルスや細菌による「感染症」ではなく、自身の免疫システムが過剰に反応してしまう病気です。
- 風邪ではないため、抗生剤や一般的な解熱剤がほとんど効きません: アセトアミノフェンなどを飲んでも熱が下がりにくいのが特徴です。
- 「ステロイド薬」を1回飲むと、数時間で劇的に熱が下がります: これが治療であると同時に、PFAPAであると確定診断するための重要な手がかりにもなります。
- 成長とともに自然に治りますが、手術(扁桃摘出術)で完治させることも可能です: 小学校の中学年〜高学年頃までには自然に発作がなくなりますが、生活への支障が大きい場合はお薬の予防や手術を検討します。
1. PFAPA(プファパ)症候群ってどんな病気?
「毎月必ず、決まった時期に高熱が出るんです」「保育園に1週間行くと、必ず熱を出して呼び出されます」 診察室でこのようなご相談を受けた際に、小児科医がまず頭に思い浮かべるのがこの「PFAPA症候群」です。主に5歳以下で発症することが多い病気です。
ウイルスや細菌が外から入ってくる「感染症(風邪)」ではなく、お子様自身の免疫システムが定期的にエラーを起こし、自分自身で炎症を引き起こしてしまう「自己炎症性疾患」の一つと考えられています。
2. 病名の由来と「4つの特徴的な症状」
PFAPAという名前は、以下の4つの主な症状の英語の頭文字をとったものです。
- P(Periodic Fever):周期的な発熱 3〜8週間(典型的には約4週間=1ヶ月)の規則正しいサイクルで、突然39〜40度の高熱が出ます。熱は自然に任せると3〜6日ほど続きます。
- A(Aphthous stomatitis):アフタ性口内炎 口の粘膜や唇の裏などに、痛みを伴う白っぽい口内炎ができます。(※口内炎は出ないお子様もいます)
- P(Pharyngitis):咽頭炎 のどが赤く腫れ、扁桃腺に白い膿(白苔)がつくことがあります。溶連菌やアデノウイルス感染症と非常に似た所見です。
- A(Adenitis):頸部リンパ節炎 首の周り(顎の下など)のリンパ節が腫れて、触ると少し痛がります。
熱が出ている数日間はぐったりしますが、熱が下がると嘘のようにケロッと元気になり、次の発熱サイクルが来るまでの数週間は、全く健康なお子様と同じように元気に遊び、成長・発達にも一切遅れが出ないのがこの病気の大きな特徴です。
3. 「ただの風邪」と間違われやすい理由
のどが赤くなり、熱が出て、首が腫れるため、最初は「風邪」「溶連菌感染症」「アデノウイルス」「伝染性単核球症」などと診断されることがよくあります。 しかし、PFAPAには通常の感染症とは異なる以下の特徴があります。
- 溶連菌やアデノウイルスの検査をしても「陰性(マイナス)」になる。
- 細菌感染ではないため、抗生剤を飲んでも全く熱が下がらない。
- 通常の解熱鎮痛剤(アセトアミノフェンやイブプロフェン)を飲んでも、一時的に少し下がるだけで全く効かないことが多い。
「検査は陰性なのに、抗生剤が効かず、毎月決まって同じような熱を出す」という熱のパターンが、診断のための最も重要な手がかりになります。
4. 治療の進め方(急性期と予防)
PFAPAには、特有の有効な治療法がいくつか確立されています。
① 急性期の治療(熱をスパッと下げる)
- ステロイド薬(プレドニゾロン等)の単回内服: 熱の出始めにステロイド薬を1回だけ飲むと、1日以内にスッと熱が下がり、そのまま再発しないのが最大の特徴です。これは「ステロイドが劇的に効いた」という事実自体が、PFAPAの診断を裏付ける強力な証拠になります。 (※ただし、ステロイドを使うと「次の発熱サイクルが少し早まる(間隔が短くなる)」という現象が起きることがある点には注意が必要です)。
② 予防的な治療(熱の頻度を減らす)
- シメチジン(タガメット、カイロック)の毎日の内服: 元々は胃薬ですが、免疫を調整する働きがあり、毎日継続して飲むことでPFAPAの発作の頻度を減らしたり、発作をなくしたりする効果が確認されています。
③ 根本的な治療(完治を目指す)
- 口蓋扁桃摘出術(手術): のどちんこの両脇にある「扁桃腺」を全身麻酔で摘出する手術です。PFAPAのお子様にこの手術を行うと、非常に高い確率(約80〜90%)で発作が完全に消失し、完治します。 毎月の発熱で親御さんの仕事に大きな支障が出ている場合や、お子様の幼稚園・学校の欠席が多すぎる場合は、耳鼻咽喉科にご紹介して手術を積極的に検討します。
5. 予後について
「毎月こんなに高熱を出して、脳や体に後遺症が残らないか」と心配される親御さんがいらっしゃいますが、PFAPA症候群によって将来的に重大な病気になったり、成長や発達に悪影響が出たりすることはありません。
治療をしなくても、小学校の中学年〜高学年(およそ10歳前後)になる頃には、自然に発作の間隔が空いていき、最終的には完全に消失する(治る)病気です。
熱の記録をスマートフォンなどで付けていただき、「毎月同じパターンだな」と気づいた段階で、ぜひ一度診察室でご相談ください。お子様とご家族の生活スタイルに合わせた最適な治療方針を一緒に決めていきましょう。




