黒沢院長のまとめ
- 昔は「アレルギー性紫斑病」と呼ばれていた病気です: 風邪などのウイルス感染をきっかけに、免疫の異常が起きて細い血管に炎症が起こる病気です。
- 「皮膚」「関節」「お腹」に症状が出ます: 足やお尻の赤い点々(紫斑)に加え、足首や膝の痛みで歩けなくなったり、激しい腹痛を伴ったりすることがあります。
- ほとんどは数週間で自然に良くなります: 特効薬はなく、安静と痛みを和らげる対症療法が基本です。ただし、お腹の痛みが激しい場合はステロイド薬を使用することがあります。
- 最も注意すべき合併症は「紫斑病性腎炎」です: 見た目の症状が治まった後から遅れて腎臓に炎症が起きることがあるため、数ヶ月間は定期的な尿検査が絶対に必要です。
1. IgA血管炎ってどんな病気?
主に3歳〜10歳くらいのお子様に多く見られる病気です。 親御さんの世代には「アレルギー性紫斑病」や「ヘノッホ・シェーンライン紫斑病」という名前で広く知られていましたが、近年、病気の原因が「IgA(アイジーエー)」という免疫物質の異常による血管の炎症であることが明確になったため、国際的に「IgA血管炎」という名称に統一されました。食物やダニなどのいわゆる「アレルギー」とは無関係です。
多くの場合、秋から冬にかけて、風邪や溶連菌感染症などをきっかけにして発症します。
2. 特徴的な「4つの症状」とアラームサイン
IgA血管炎では、以下の4つの症状が単独、あるいは組み合わさって現れます。
- 皮膚症状(紫斑): 足のすねから甲にかけて、あるいは太ももやお尻に、赤い点々(紫斑)が出ます。指で押しても色が消えず、少し盛り上がって触れるのが特徴です。
- 関節症状: 足首や膝の関節が腫れて痛みます。「足が痛くて歩けない」と言って受診され、靴下を脱がせたら紫斑が見つかって診断がつくケースが非常に多くあります。
- 消化器症状(お腹の痛み): 胃腸の血管に炎症が起きることで、激しい腹痛や嘔吐、血便を引き起こします。まれに、腸の一部が別の腸の中に潜り込んでしまう「腸重積(ちょうじゅうせき)」という命に関わる合併症を起こすことがあるため、のたうち回るような激しい腹痛がある場合は、早急なエコー検査などの対応が必要になります。
- 腎症状(紫斑病性腎炎): 腎臓の血管に炎症が起き、血尿や蛋白尿が出ます。
3. 治療の進め方とステロイドの使用
IgA血管炎は、基本的には数週間でご自身の免疫が落ち着き、自然に良くなる(自然寛解する)病気です。そのため、ウイルスを直接退治するような特効薬はありません。
- 安静と対症療法: 重力で足に血液が溜まると紫斑や痛みが悪化しやすいため、極力歩かせず、横になって安静に過ごすことが基本です。関節痛にはアセトアミノフェンやイブプロフェンなどの鎮痛薬を使用します。
- ステロイド薬の投与: 激しい腹痛で水分も摂れないような重症例に対しては、血管の炎症を強力に抑え込むためにステロイド薬を使用します。2023年に日本で初めて発行された「小児IgA血管炎診療ガイドライン」でも、消化器症状に対するステロイドの有効性が示されています。
4. なぜ「治った後も尿検査」が必須なのか?
紫斑や関節痛といった目に見える症状は、多くの場合1ヶ月以内にすっかり良くなります。 しかし、この病気で小児科医が最も警戒しているのは、遅れてやってくる「紫斑病性腎炎」です。
腎炎は、発症から数週間〜数ヶ月遅れて発症することがよくあります。初期の腎炎は痛みなど分かりやすい症状がなく、尿検査をしなければ発見できません。ここで腎炎を見逃して放置してしまうと、将来的に慢性腎不全など一生の負担を残すリスクがあります。
そのため、当院ではIgA血管炎と診断された方には診断から半年後まで、毎月検尿しに来ていただくようお願いしております。元気になってからも通院を続けるのは大変かと思いますが、腎炎を見逃さないためにもしっかり通院を続けるようにしてくださいね。




