黒沢院長のまとめ
- 将来の「がん」を防ぐことができる極めて重要なワクチンです: 子宮頸がんをはじめ、HPVが原因となる複数のがんを発症前に予防します。現在公費で打てる「9価ワクチン(シルガード9)」は、子宮頸がんの原因ウイルスの約90%をカバーします。
- 15歳未満で始めれば「2回接種」で完了します: 小学校6年生〜高校1年生相当の女子が定期接種(無料)の対象ですが、15歳の誕生日を迎える前に1回目を接種すれば、計2回(通常は計3回)で接種が完了します。
- 過去に報道された「多様な症状」との因果関係は否定されています: 慢性的な痛みや運動障害などの症状とワクチン接種との間に、科学的・疫学的な因果関係がないことが国内及び世界の数万〜数十万人規模の調査で証明されています。
- 男の子にとっても無関係ではありません: HPVは男性にも中咽頭がん、肛門がん、尖圭コンジローマなどを引き起こします。男児への接種は、将来の自分自身を守るだけでなく、将来のパートナー、そして社会全体を守ることにもつながります。
1. HPVワクチンとは?
HPV(ヒトパピローマウイルス)は、性交渉の経験がある女性の約5割〜8割が一生に一度は感染すると言われる非常にありふれたウイルスです。 多くの場合、感染しても自身の免疫によって自然に排除されますが、ウイルスが排除されずに長期間感染が続くことで、数年から数十年かけて子宮頸がんをはじめとするがんを発症します。
日本では毎年約1万人が子宮頸がんに罹患し、約3,000人もの女性が命を落としています。発症のタイミングが20代〜40代に多いことから、「マザーキラー(母親殺し)」の異名を持つ、とても恐ろしい病気です。命を落とさなかったとしても、治療の過程で子宮や卵巣を摘出することになったり、抗がん剤治療による長期的な合併症を生じたりと、その後の一生に影を落とす可能性があります。HPVワクチンは、ウイルスの感染そのものを防ぐことで、将来の「がん」を確実かつ積極的に予防する唯一の手段です。
2. 種類と接種時期
現在、定期接種(公費・無料)として主に使用されているのは、最も予防効果の高い「9価ワクチン(シルガード9)」です。これにより、子宮頸がんの原因となるHPV型の約90%をカバーできます。
- 定期接種の対象: 小学校6年生〜高校1年生相当の女子
- 最も推奨されるタイミング: 中学校1年生〜2年生の時期(15歳未満)
9価ワクチンは通常、半年間かけて計3回接種する必要がありますが、1回目の接種を15歳の誕生日を迎える前に行った場合に限り、計2回の接種(初回と6ヶ月後)で完了することが認められています。 これは、若い年齢(15歳未満)の方が抗体(免疫)の獲得能力が高く、2回の接種でも3回接種と同等以上の十分な効果が得られることがデータで証明されているためです。通院の負担を減らすためにも、中学校に入ったら早めに1回目を接種することをおすすめします。
3. かつての「副反応」に関する不安と現在の評価
保護者の方の中には、過去のニュース報道(全身の痛みや歩行障害などの多様な症状)を見て、安全性に不安を感じている方が今もいらっしゃるかと思います。
しかし、日本を含む世界各国で行われた数万人〜数十万人規模の大規模な疫学調査により、「ワクチンを接種した群」と「接種していない群」において、それらの多様な症状の発生率に差はなかったことが科学的に証明されています。つまり、ワクチンが原因でそれらの症状が引き起こされたわけではない(因果関係はない)ということが、国際的な医学の共通認識です。
現在、世界保健機関(WHO)や日本小児科学会、日本産科婦人科学会など、国内外のすべての主要な医療機関が安全性を確認し、強く接種を推奨しています。
※なお、筋肉注射であるため、接種時の痛みや、緊張による一時的な脳貧血(迷走神経反射による立ちくらみなど)が起こることはあります。そのため当院では、接種後30分程度は院内で座って落ち着いて様子を見ていただくようにしています。
4. 男の子にも接種を推奨します
HPVは女性だけのウイルスではありません。男性にとっても、中咽頭がん、肛門がん、陰茎がん、尖圭コンジローマなどの原因となります。
現在、日本でも小学校6年生〜高校1年生相当の「男児」に対する4価、9価HPVワクチンの任意接種(自治体によっては公費助成あり)が承認されています。 男の子がHPVワクチンを打つことには、医学的に大きな2つの意義があります。
- 自分自身を将来のがんや感染症から守ること
- 社会全体の感染源を減らし、将来のパートナーを子宮頸がんから守ること(集団免疫の獲得)
小児科医として、女子だけでなく、男子の方にも接種の検討を強くおすすめします。
5. 当院では日曜・祝日も接種を受け付けています
当院では正しい情報に基づき、子どもたちが将来がんで命を落としたり、子宮を失ったりすることを防ぐため、HPVワクチンの接種を積極的に進めています。
当院は日曜・祝日含め、週7日いつでも接種のご予約を受け付けています。
学校や部活、塾などで忙しい日々かと思いますので、是非とも当院をご活用ください。




